
ペーテル・ブノワと僕を結び付けた二つの存在…
まず "Hoogmis"(荘厳ミサ)を初演した長岡市民合唱団、
そして…この演奏会に際して来日したベルギーの音楽学者、ヤン・デウィルデさんである。
デウィルデさんはとても気さくな方だ。
初対面の日、僕は覚えたばかりのオランダ語で話しかけた。
"Goedenavond!…Mijn naam is Kazuya Ozawa. Ik ben dirigent."
彼は一瞬驚いた顔をしたあと、にっこりと微笑んだ。
「君はオランダ語ができるのかい?」
「いえ、これで全部です」
ここから先はすべて英語でのやり取りであった。
演奏会終了後のレセプションにて…
僕はブノワのスコアを持って彼にサインを求めた。
彼はそこにメッセージを書いてくれた。
「日本で君のような、ブノワについて識っている人に会えて嬉しい」
デウィルデさんとは現在も交流が続いている。
初期のモテット集やレクイエム、さらに大作「戦争」の楽譜など、彼からは多くの研究資料をいただいた。
彼は(かつてブノワが設立した)王立アントワープ音楽院の音楽資料館長でもあるのだ。
先だってこのBlogに載せたブノワの生涯についての小文も、デウィルデさんの著作を参考に纏めたものである。
ブノワは日本ではほとんど知られていないが、"Hoogmis" を含め素晴らしい作品を数多く遺している。
これから、それらを少しずつ紹介していきたいと思う。