2010年06月24日

私の愛聴盤(11)

§シベリウス/交響曲第6番
 オッコ・カム指揮ヘルシンキフィル('82年録音)


ヘルシンキフィルの初来日から30年近くが経つ。
ずいぶん昔になってしまったのだなぁ…

その時のシベリウス/交響曲ツィクルスがFM東京で放送され、当時まだ高校生だった僕の心を捉えた。
全曲目をエアチェックし、そのテープは僕の宝物となった。
「シベリウスは第1、第2がポピュラーだが、それ以降の曲は渋くて難解である」
などという予備知識(?)は、当時の僕には無かった。
(今思えばとても幸せなことである)
そんな僕の、一番のお気に入りがこの「第6」だった。

第1楽章冒頭、薄く拡がる透明な高弦の響きの中に、静やかで冷美な大気を感じる。
木管が加わり、しばらくしてホルンが入ってくる(Fの和音が響く)ところでは、柔らかく差しこむ陽の光を見るかのようだ。
もちろんこれは描写音楽ではない。
だが、その時の僕には確かにそのように「聞こえた」のだ。
またこの楽章、パッと聴いた感じではニ短調、あるいはヘ長調(いわゆる「フラット1個」の調)なのだが、なぜかしばしば(「シ♭」ではなく)「シ」の音が鳴る…
今ならば「ああ、ドリア旋法ね」の一言で済んでしまうのだが、それを知らない昔の僕にはとても新鮮に、そして神秘的に響いたのだった。

数年前にCD化され、久しぶりに聴いてみた。
当時の記憶が鮮やかに蘇ってくる…あのときの感触のままだ!
ライヴゆえの小さい疵もあるが、何より指揮者とオーケストラの、この曲に対する「愛」を感じる演奏である。
この演奏を聴くと、シベリウスの後期様式=難解、という図式が単なる思い込みのようにも思えてくる。
posted by 小澤和也 at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 愛聴盤
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