昨晩、勉強を終えてから、久しぶりにバッハを聴く。
選んだのは、
バスのための独唱カンタータ「われは満ちたれり」だ。
この曲のテーマは「安らかな死」。
イエスに "会えた" ことにより、喜びのうちにこの世に別れを告げる、一人の老人の思いが歌われている。
曲は5つの部分に分かれており、しずしずと進む第1曲と舞曲のように熱気を帯びた終曲(どちらもハ短調)では、独唱とともにオーボエが大活躍する。
それにしても…バッハの音楽におけるオーボエの響きの何という存在感だろう!
しかし、それらにもまして僕の心を激しく震わせるのが、中央に置かれた変ホ長調のアリアだ。
優しい子守歌のようなその旋律。
「まどろめ、疲れた目よ
穏やかに、そして幸せに閉じよ!」
このあとさらに、現世への決別と "かの地" への憧れが歌われるのだが、それらの言葉の力をはるかに越えて、純粋なる「音楽の力」が迫ってくるのだ。
そして…
感動とともに、改めて自分を見つめ直す、そんな気持ちにさせてくれるのである。
僕はこの演奏を、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの歌う盤で聴いている。
(実は…だからこれを選んだのだ)
深く柔らかな声と、厳しく研ぎ澄まされた美しい言葉との妙なる調和がここにある。
Requiescant in Pace.
2012年05月31日
我は満ち足れり
posted by 小澤和也 at 10:04| Comment(0)
| 日記
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