2013年02月20日

伝記 ペーテル・ブノワ(4)

 
§第2章
[ペーテル・ブノワの少年時代]
 
(前回からの続き)
ブノワの母親もまた、息子の心を動かすすべを理解していた。
彼女は、宝物のような物語・伝説の数々を知っており、表現豊かな朗読を聞かせることにより、子供たちのイマジネーションに強い感動を与えられるような、不思議な力を持った女性だった。
彼女はあるとき、ドイツの作家コツェビューの戯曲を全幕朗読した…それは韻文で書かれ、演劇協会によって10回以上も上演されている作品であった。
こうして母親はペーテル少年のために、おとぎ話の登場人物や伝説的な出来事に満ちたミステリアスな世界を築いてみせる。
そして、それらのイメージや感動の宝庫(後にこの芸術家を幾度となく奮い立たせる)は、幼い頃よりペーテルの敏感な心の中で育まれていたのだった。
 
さて、これらはすべて事実だろうか?
あるいは、それらの奇抜さが書き遺されることによって生まれた空想の産物なのか?
今後の本格的な調査が、ブノワの青年時代に新たな光を投げかけるかもしれない。
 
ハレルベーケには、この少年を抑えがたく引きつけるさらに別のものがあった…それは日曜日や祝日に教会で演奏された音楽である。
そこにはオルガンだけでなく、オーケストラおよび充実した合唱団があり、共に大変有名な作曲家〜なかんずくハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン…既に100年以上にわたり世界中で演奏され、喝采を送られている三人のウィーンの作曲家〜の偉大な作品を演奏していた。
 
ペーテル少年はこれらの演奏を、一つの響きも聞き落とすことなく熱心に聴いていた…彼のような少年は他にいなかった。
彼の思考は、音楽によって高みを浮遊していく。
美しい旋律の響き、オルガンやその他様々な楽器の音色は、注意深くそして有頂天になってそれらを聴くペーテルにとって魅惑的な夢の世界の黄金の扉を開いたのだった。
 
音楽への欲求は抗いがたくかきたてられ、そしてペーテルは音楽的能力を身につけるためのあらゆる機会を逃さなかった。
教会で聴いた音楽によって、少年はより多くの恩恵を受けたであろう…家族から与えられたそれよりも。
(彼は父親の吹く甲高いクラリネットや祖父の吹くクラクションのようなホルンを聴いているのだが)
けれども、二人は常に音楽を理解する耳を持っていた…ともに音楽をこよなく愛し、そして疑いなくペーテルの音楽的成長に大いに貢献したのであった。
 
(第2章 つづく)
 
posted by 小澤和也 at 09:30| Comment(0) | 音楽雑記帳
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