![]() 《フランデレンの芸術的栄光 (ルーベンスカンタータ)》 完成: 1877年6月、アントウェルペン 初演: 1877年8月18日、フルーン広場、ペーテル・ブノワ指揮 出版: ペーテル・ブノワ財団 §音楽スタイルの大転換 1877年はフランデレン地方で活躍したバロック期の画家ルーベンス(1577-1640)の生誕300周年でした。 これを記念してアントウェルペン市がブノワに委嘱し作曲されたのがこの「フランデレンの芸術的栄光」です。 1870年代前半までのブノワは「愛の悲劇」(歌曲集)や反戦オラトリオ「戦争」など、前衛的な和声を多く用いた主観的な作品を書いていましたが、その後表現のスタイルを“一般大衆にも容易に理解できる平明な音楽”へと大きく転換させていました。この「フランデレンの芸術的栄光」もキャッチーで魅惑的な旋律、色彩的な劇的効果といった特徴をもった明快な作品となっています。 §巨大なオーケストラ編成 この曲のもう一つの特徴は大人数の管弦楽を使用していることです。その編成は次のとおりです: ピッコロ2、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、E♭クラリネット、クラリネット2、バスクラリネット、ソプラノサックス、テナーサックス、ファゴット2、コントラファゴット ホルン6、トランペット6、トロンボーン6、テューバ2 ティンパニ、打楽器(トライアングル、シンバル、大太鼓、小太鼓 バンダ(アイーダトランペット6) 弦五部 混声四部合唱、児童合唱 オーケストラ本体と離れて置かれた2群のアイーダトランペット、そしてユニゾン(斉唱)を多用した圧倒的なコーラスの響きが印象的です。 §作品について 全体は三部構成になっています。 各部において世界の国や地域が“擬人化されて”合唱によって歌われます。 第1部は“(ベルギーとオランダからなる)姉妹都市”のもとを“ヨーロッパ”“アジア”“アフリカ”などが訪れるという筋立てでフランデレンを称える歌が展開していきます。 (”アントウェルペン“という一都市もこの中に加わっています) 最後は古代ギリシャへの讃歌で締めくくられます。 第2部はその冒頭で“姉妹都市およびアントウェルペン”によって 『なんと長く陰鬱な夜だったか(...)人類は手枷足枷をかけられ(...)』 と重苦しく歌われて始まります。 すると世界の各地域が 『最初の光はどこに射したか?』『自由の歌は何処で初めて響いたか?』『それはフランデレンで!』etc. とこぞってフランデレンを誉め称えます。 結びは児童合唱の澄んだ声が美しい「カリヨンの歌」で賑々しく終わります。 第3部は、第1部の冒頭に現れた祝祭的なファンファーレで始まりますが、すぐに“嫉妬” と“姉妹都市”との間で応酬が繰り広げられます。 『汝らの芸術は、自由は、魂は失われた!』 『踏みにじられ嘲笑された祖国に慈悲を!』 すると“全世界”が支配からの自由を訴えかけるように平和共存のメッセージを叫びます。 『人間は自由であれ、歩き回るところ、住むところすべて、スヘルデの泡立つ流れのように』 フィナーレではふたたび「カリヨンの歌」が感動的に歌われ全曲の幕を閉じます。 §参考音源 ・デ・フォホト指揮、王立フラームス歌劇場管弦楽団他 (1958年ライヴ録音) Eufoda 1158 ・ファラハ指揮、アントウェルペン・フィル他 (1977年ライヴ録音) CBS 73697 (LP) 前者は録音が非常に古めかしくトランペットが派手にコケたりしますが、ライヴ感・祝祭的な気分は満点です。 これに比べると後者はいくぶん穏やかな表現ですが音質的にははるかに聴きやすいと思います。 「カリヨンの歌」は短く素朴ですがとてもキャッチーで心にしみるメロディです...まずはこの部分からご一聴を! デ・フォホト指揮による演奏へのリンクはこちら↓
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