2019年10月01日

カリンニコフ(6): 悲しき歌

 
 
§ 悲しき歌  Chanson triste
 
作曲: 1892-93年
出版: 1901年、“ピアノのための4つの作品” の第1曲として
 
 
全24小節、2分足らずの可憐な小品。
4分の5拍子という珍しい拍子で書かれているが、終始 <3拍子+2拍子> という一定の周期の中での揺らぎであり、むしろある種の心地良さを感じる。
ギターや歌を好み、ヴァシリーの音楽的才能を目覚めさせた彼の父親に献呈された。
 
 
[第1-8小節]
昔語りのようなト短調の美しい旋律。
自然短音階的に上下行し、その表情は淡く静かな憂いを湛えている。
一方これを支える伴奏のハーモニーは和声的であるため、ところどころハッとするような瞬間が現れる。
(例えば第4小節の4-5拍目、および第8小節1-2拍目など)
 
 
 
[第9-16小節]
メロディの起伏がやや大きくなり、カリンニコフ作品の特徴でもある巧みな和声の運び (変ホ長調→ハ短調→ト長調)ともあいまって音楽は一瞬高まりを見せるが...それも束の間。
主調であるト短調のドミナント (属音) 上に落ち着き、はじめの旋律が回帰する。
 
 
[第17-21小節]
“pp  mezza voce”(ピアニッシモ、半分の声量で) でもって冒頭の旋律が繰り返され、静かに曲を閉じる。
 
 
 
《カリンニコフの交響曲からは彼の病苦の痕跡が全く見られない。ピアノの前でだけ、彼はその胸中を吐露することができたのだった》
《彼のピアノ作品は野に咲く花のようである。シンプルでチャーミング、そしてあれこれと声高に主張することがない》
 
(「ロシア・ピアノ曲集/リャプチコフ」CD解説より自由に引用させていただきました)
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 16:03| Comment(0) | 音楽雑記帳

2019年09月26日

カリンニコフ(5) 序曲『ブィリーナ』

 
 
§序曲『ブィリーナ』
 
作曲: 1892年
初演: 1950年7月、ラジオコンサートにて
演奏時間: 12分
編成:フルートx2、ピッコロ、オーボエx2、クラリネットx2、バスーンx2、ホルンx4、トランペットx2、トロンボーンx3、ティンパニ、ハープ、ピアノ、弦五部
 
 
1892年、カリンニコフが音楽演劇学校を卒業した直後に作曲された演奏会用序曲。
(当時カリンニコフ26歳)
1951年の没後50周年を機にソ連の音楽出版社がこの『ブィリーナ』を含む幾つかのカリンニコフ作品を出版しているが、初演はそれに先立って行われたことになる。
 
 
「ブィリーナ(Bylina)」はロシアに古く伝わる口承による叙事詩である。
ロシアで広く知られた英雄イリヤ・ムーロメツ (グリエールの交響曲) やノヴゴロドの商人サトコ (リムスキーのオペラ) などが音楽ファンにとって耳馴染みのあるブィリーナの主人公たちとのこと。
カリンニコフの『ブィリーナ』は特定の人物を描いた作品ではないようだ。
 
 
曲のスタイルは序奏部をもったソナタ形式。
これまで『ニンフ』『組曲』『弦楽セレナード』と見てきたが、ここで初めてソナタ形式の作品が登場することになる。
 
構成は以下の通り。
均整のとれた典型的なソナタ形式だ。
(71-119 などの数字は小節番号を、カッコ内の数字は小節数を表す)
 
1) 序奏部 Sostenuto (Andanteと追記あり), 4/4(拍子), ト短調...1-70 (70)
ソナタ形式主部 Allegro, 2/4, 変ロ長調
2) 呈示部...71-161 (91)
3) 展開部...162-285 (124)
4) 再現部...286-365 (80)
5) コーダ...366-421 (56)
 
1) 四分音符主体のゆったりとした序奏部主題がチェロ→第2ヴァイオリン→ヴィオラ→第1ヴァイオリンの順でポリフォニックに奏でられこの曲は始まる。
その後いくつかの派生主題が現れるが、曲調はすべて最初の主題と共通しており、悠然とした雰囲気が序奏部全体を支配している。
クライマックスで金管が主題を強奏したのち曲は穏やかさを取り戻し、主部へと進んでゆく。
 
2) 呈示部第1主題は長調/短調の間を行き来するような民謡風のもの。
主部全体を通し速度表記はAllegroであるが、戦闘的・直情径行型な楽想はほとんど出てこない。
第1主題の音形を用いた新しいフレーズが現れ盛り上がりを見せたところですぐに第2主題部となる。
 
Meno mosso (速度を減じて) と指示された第2主題はト長調、ロシア風の哀愁に満ちた美しいメロディ。
【近年、この抒情的な主題がソビエト連邦国歌 (アレクサンドロフ作曲) の歌い出しと酷似していると話題になったそうだが、改めて聴き比べた限り個人的には (そう言われれば似ている...かなあ) といった程度の印象でしかなかった】
この部分でハープとともにピアノによる分散和音の伴奏音形が聞こえてくる。
ロシアの民族楽器グースリを思い起こさせるどこか懐かしい響きである。
 
3) Tempo primo (=Allegro) に戻ったところから展開部である。
ここでカリンニコフは第1および第2主題のモティーフをさまざまに組み合わせて楽想を展開してゆく。
“考え抜いて書かれた” 印象の強い部分でありやや未消化で単調なきらいもあるが、ここでの経験がのちの第1交響曲第1楽章の見事な展開部に活かされたのだろうと考えると、それはそれで楽しいものだ。
序奏部主題が (アレグロのテンポで) ヴァイオリン、木管そしてトランペットによって力強く奏されると、展開部最後のクライマックスである。
やがて音楽は静まり、ごく自然な流れで再現部へ。
 
4),5) 再現部はほぼ型通り、第2主題も主調である変ロ長調で現れる。
Meno mossoからテンポを上げ、ふたたび Tempo primoとなってコーダへ入る。
全曲の終わり近く (第381小節〜) に現れる壮麗な全奏とファンファーレ、僕はこの部分に第1交響曲第4楽章、あの力強い最終盤の “原形” を見た。
 
 
オーケストレーション技術は3年前の『ニンフ』から格段の進化を遂げ、『組曲』で多楽章構成の作品に挑戦、そして『ブィリーナ』でソナタ形式の楽曲に取り組んだカリンニコフ。
 
〜次はいよいよ交響曲だ〜
彼はきっとそう思ったに違いない。
posted by 小澤和也 at 18:25| Comment(0) | 音楽雑記帳

2019年09月18日

演奏会のごあんない

 
 
これから出演するイベントのお知らせです。
 
§第41回 江戸川区合唱祭
(合唱団あしべ)
 
日時…2019年10月20日(日)  13:30開演
会場…タワーホール船堀 大ホール (都営新宿線船堀駅下車すぐ)
出演…合唱団あしべ、小澤和也(指揮)、平岡祐子(ピアノ)
 
 
合唱団あしべ恒例の秋の本番、合唱祭。
今回は唱歌『四季の雨』、曲集「白いうた 青いうた」より『はたおりむし』(新実徳英/谷川雁)、そして『いのちの記憶』(二階堂和美)の3曲を歌います。
 
 
『四季の雨』については (以前にも当ブログで少し書きましたが) あしべの最近の“お気に入り”曲のひとつ。
 
合唱団あしべと『四季の雨』
 
同じ唱歌集 (「尋常小学唱歌」第6巻)に収められた『朧月夜』『我は海の子』『故郷』ほど有名ではありませんがとても佳い歌だと思います。
 
 
高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』、そのエンドロールで流れる『いのちの記憶』を初めて聴いたとき、(この曲をあしべで歌ったらどんなふうになるだろう) などと大それたことを考えたのは昨年の夏でした。
 
いまのすべては
過去のすべて
必ず また会える
懐かしい場所で
 
当然ながら技術的にはとても厳しいものがありますが、詩への共感そして“年輪の深さ”でもってあしべなりのうたが歌えたらと考えています。
 
 
区内の数多くの合唱団が素敵な歌声を披露される合唱祭。
お近くの方、ご都合よろしければぜひお出かけください。
 
(昨年のステージより)
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 14:58| Comment(0) | 演奏会情報

2019年09月15日

Belgian Beer Weekend 2019

 
今年も行ってきました、
ベルギービールウィークエンド2019
@六本木ヒルズアリーナへ。
 
 
開場前のアリーナ。
 
 
4:00pm、
まだ客足もまばら。
 
 
定番のフリッツ&ソーセージとともに。
昼呑みの背徳感がたまらない。
 
この日頂いたのは
シメイホワイト、マレッツトリプル、セゾン1858、ルシファー、
そして締めにもう一杯シメイホワイト (*^o^*)
 
 
ベルギービール、万歳!
ごちそうさまでした。
 
 
 
 
 
 
posted by 小澤和也 at 23:49| Comment(2) | 日記

2019年09月04日

専修大学フィル夏合宿 in 河口湖

 
専フィルとの2年ぶりの夏合宿へ。
(9/3-4、河口湖)
 
今回も早めに新宿のバスターミナルへ向かい、ブルーボトルコーヒーにて “気合注入の儀”。
 
 
確かなスキルを持つ方がコーヒーをドリップする姿はいつ見てもほんとうに絵になるなあと思う。
 
 
この日はブレンドコーヒーをオーダー。
Three Africas”、想像以上にダイナミックな味わいだった。
舌の上に強烈な酸味、喉の奥にほのかな苦み、そして鼻腔いっぱいに広がる豊かな香り。
 
 
 
最後列の通路側は荷物も置きやすく、脇を人が通る気遣いも不要と知る...実に快適。
 
 
定刻に河口湖駅到着。
今回のお宿は初めてお世話になるところ。
照明が少し暗かったが、ほどよい残響のゆったりとしたスタジオだった。
 
休憩中の一コマ。
 
 
曲目は
ヴェルディ:「ナブッコ」序曲
ビゼー:「アルルの女」第2組曲
カリンニコフ: 交響曲第1番ト短調
 
どれも素晴らしい作品、じっくりと取り組むに値する名曲である。
これから専修フィルの皆さんとの豊かな時間が始まる。
とても楽しみだ。
 
 
食後。
居室でのリラックスタイム。
今回のお供はブラジル/オーロ・ヴェルデ。
 
 
皆さん、お疲れさまでした。
またキャンパスで会いましょう!
posted by 小澤和也 at 23:54| Comment(0) | 日記